速度検層
P波検層
【原 理】
ボーリング孔を用いて地盤を伝搬する時間から速度値を求める速度検層の一種です。P波とS波を用いるPS検層に対して、P波だけを利用する測定方法です。
地表面を起振した時に生じる波動(P波)を孔内任意の深度に設置した受振器で観測します。その波の伝播時間と伝播距離の関係から、弾性波速度(P波速度)値を算出して地盤の速度分布を調べます。
【測定方法】
孔内任意の深度に受振器を設置します。孔口近傍に設置した振源で人工振動(P波)を発振し、その振動を孔内に設置した受振器で観測します。
杭を地表面に設置し、その杭を垂直方向に打撃してP波を発生させます。
周囲の雑振動が比較的大きい場合、複数回の起振を行い、それらを加算する方式(スタッキング処理)を用いることがあります。
■P波検層 測定概要図
【特徴・適用限界】
- 岩盤を対象とした場合に多く利用されます。
- 地盤の大局的なP波速度構造を求めることが出来ます。
- 測定孔の近くに振源を設置する場所を確保する必要があります。
- 圧着固定型のゾンデを用いれば、孔内水が無い場合でも測定出来ます。
- 保護管がなく、孔内水がある場合は、多連受振器を用いて複数深度を一度に測定することも出来ます。
【応用例】
地盤を伝わる波と杭を伝わる波の速度の違いを利用して杭の深さを知ることもできます。
■P波検層 根入れ
ダウンホールPS検層 (板叩き法)
【原 理】
ボーリング孔を用いて地盤を伝搬する時間から速度値を求める速度検層の一種です。
地表面を起振した時に生じる波動(P波・S波)を孔内任意の深度に設置した受振器(上下方向1成分,水平方向2成分)で観測します。その波の伝播時間と伝播距離の関係から、弾性波速度(P波速度・S波速度)値を算出して地盤の速度分布を調べます。
【測定方法】
孔内任意の深度に受振器を圧着設置します。孔口近傍に設置した振源で人工振動(P波・S波)を発振し、その振動を孔内に圧着設置した受振器で観測します。P波及びS波の観測を終えたら、受振器を次の深度に移動します。
S波は、板を地表面に密着設置し、その板の側面を打撃して波を発生させます。打撃方向を板の左右双方から行うことにより、S波の振動方向が反転することを確認します。板にスパイクを打設したり板に荷重をかけたりして、地面と板との圧着度を高めます。この起振方法から「板叩き法」とも言われます。
P波は、杭を地表面に設置しその杭を垂直方向に打撃して波を発生させます。
周囲の雑振動が比較的大きい場合は、複数回起振してそれらを加算する方式(スタッキング処理)を用いることがあります。
【特徴・適用限界】
- 地盤の大局的な速度構造を求めることができ、手軽で確実な方法です。
- 測定孔の近くに振源を設置する場所を確保する必要があります。
- ゾンデを圧着固定するため、孔内水が無い場合でも測定できます。
■ダウンホールPS検層 測定概要図
サスペンションPS検層
【原 理】
ボーリング孔を用いて地盤を伝搬する時間から速度値を求める速度検層の一種です。
孔内の受振器を孔壁に圧着することなく孔内に吊り下げた状態で、孔軸方向に伝搬するP波及びS波を測定します。
ゾンデに内蔵された電磁ハンマーが孔軸に対して直交方向に振動板を打撃し、孔内水を介して孔壁に間接的に振動を与える起振方法です。振動板に急に力が加わると、その加圧部近傍では孔内水が加圧方向に押され逆側の孔内水は引き込まれます。この圧力分布の変化が周囲の地盤をも変形させることになります。
波長が孔径よりも十分に長い場合、孔壁の横揺れとともに孔内水も同じ動きをするため、受振器の比重を孔内水と等しくすれば受振器もそれと同じ動きをし、波動を計測できます。
【測定方法】
発振器と受振器を組込んだ一連のゾンデを使います。任意の深度でゾンデを静止し、ゾンデ下部の発振器で起振、その振動を上部にある受振器で受信します。
起振器と受振器の間にはゴム製のフィルターチューブを挟んであり、波が直接ゾンデを伝って受振器に到達しないようになっています。
ゾンデには2個の受振器が配置してあります。2個の受振器の間隔は1mで、観測される波の時間差から1m間の速度値を求めます。
■サスペンションPS検層 測定概要図
【特徴・適用限界】
- 孔内起振受振方式です。
- 地表に振源を設置出来ない場合(敷地が狭い、地表に裸地が無い等)に有効です。
- ダウンホールPS検層に対して作業効率の面で大きく改善され、PS検層の適用範囲を拡大した方法です。
- ダウンホールPS検層に比べて詳細な速度分布(1m程度の薄層や地層内の局部的な速度分布など)が得られるので近年利用が増えています。
- S波速度値が水中音波速度(1.5km/S)より遅い地盤を対象とする場合によく利用されます。
- 孔内水が無い場合は測定できず、また金属保護管内も測定できません。
- ゾンデが長いため余掘りが必要です。