吹付け法面老朽化調査
吹付け工は昭和40年代から昭和50年代に非常に施工実績があり、比較的の簡易なのり面保護工として多用されました。しかし、施工後40年を経過して、老朽化が深刻な状況になってきており、「維持・補修の時代」を迎えました。
ここでは、維持・補修対策構築のために必要となる“老朽化”の原因および現況を把握することを目的とした調査を紹介します。
老朽化の分類と対策
- モルタル自体の老朽化 ・・・・・・ 更新
既設モルタルの撤去、新規吹付け - モルタル背面の空洞化 ・・・・・・ 補修、延命
充填工、注入工 - 背後地山の風化・土砂化・・・・・・ 補強
連続繊維補強土工、吹付け枠工、鉄筋挿入工、アンカー工、それらの併用工
これらの分類を考慮した老朽化の現況を把握するために、目的に適した調査手法を選定することが重要となります。以下に調査手法の主な目的、特徴および適用範囲を紹介します。
調査対象 | 探査手法 | 物性・評価 |
地表の地形形状 | 地表踏査 | 地質、地形・法面形状 |
モルタルおよび背面 | 地表踏査 | 変状調査 |
熱赤外線調査 | 背面の空洞、剥離の分布 | |
レーダ探査 | 背面の空洞 | |
打音 | ||
ドリル削孔 | ||
ファイバースコープ調査 | ||
地山 | 弾性波探査 | 風化、弱層 |
ボーリング調査 |
結果例
■変状調査
法面の目視観察を行い、亀裂、剥落などの分布、変色、湧水、目地切れ、段差等をスケッチ図として整理するとともに写真撮影を行います。
変状調査結果 ※図をクリックすると拡大図が表示されます。
■熱赤外線調査
法面の熱赤外線撮影を行い、吹付背面の地山状況や空洞および吹付の浮きあがりや剥離分布を把握します。
熱赤外線調査結果 ※図をクリックすると拡大図が表示されます。
■レーダ探査/ドリル削孔
吹付け表面からレーダ探査を行い、吹付けと地山の境界の密着度・空隙の有無を断面的に捉えます。
レーダ探査で空隙反応のあった位置で、ドリルによる削孔を行い、空隙の有無および厚さを確認します。
レーダ探査結果 ※図をクリックすると拡大図が表示されます。
■弾性波探査
吹付法面の変状状況(主にひび割れ、はらみ、モルタル背面、空洞分布状況や範囲など)から背面地山の深部から不安定と判定した場合は対策工法として、ロックボルトやグラウンドアンカー工が必要となります。この場合地山状況や地質状況などを把握するために、のり面から、弾性波探査を行うとともに、ボーリングにより判定します。
弾性波探査結果 ※図をクリックすると拡大図が表示されます。