電気探査
【原 理】
電気探査とは地盤の電気的性質を測定する事により、地盤状況を把握する手法です。自然電位法(SP法)、強制分極法(IP法)、比抵抗法などがあり、このうちの比抵抗法を扱います。
比抵抗法とは、地表に設置した一対の電流電極から電流(I)を流し、別の一対の電位電極間の電位差(V)を測定することによって、各電極の位置或いは間隔における見掛比抵抗値(ρa)を求め、その値の解析から地下の比抵抗構造を推定する方法をいいます。岩石や地層の比抵抗はその構成鉱物の種類、乾湿の状態、風化・変質の状態、温度などによって支配されるので、地下の比抵抗分布から地下構造を推定する事ができます。
【特 徴】
予備・概略調査段階、通常の調査段階、維持管理段階までの多くの段階で適応可能です。
探査目的、対象に応じて様々な電極配置が用いられます。代表的な電極配置としては、2極法(ポール・ポール法)、2極法(ポール・ダイポール法)、4極法(ウェンナー法、エルトラン法、ダイポール・ダイポール法、シュランベルジャー法)等があります。
比抵抗の変化を調べる位置・方向などにより、
(1)垂直探査(ある測点の深さ方向への比抵抗変化を調べる)、
(2)比抵抗2次元探査(ある深さの水平方向への比抵抗変化を調べる)、
(3)比抵抗3次元探査(あるエリアの地下の比抵抗変化を調べる)などがあります。
【適用限界】
- 電気を用いて比抵抗を測定する手法であるため、低比抵抗に対する感度は強く、逆に高比抵抗に対する感度は鈍くなる傾向があります。
- 電気探査では、異なる地層であっても比抵抗値が同じであれば同様の地層と解釈され、同様の地層であっても含水や風化などにより比抵抗値が異なれば、別の地層と解釈できるので注意が必要となります。
- 探査精度(分解能)は、電極間隔(最小電極間隔)、探査深度の増加に従って低下します。このため、探査目的、探査深度、測線長等に合わせて電極間隔を適切に設定する必要があります。
- 電極配置の方法によっては、地形による影響を受ける事があります。
■電気探査 電極配置概念図
■電気探査 岩盤と比抵抗値
※図をクリックすると拡大図が表示されます。
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垂直探査
■垂直電気探査 測定模式図
【特 徴】
- ある地点の地下の深さ方向の比抵抗分布を調査する方法であります。
- 電極系の中心を固定点として、電極間隔を小さい方から大きい方へ順次拡げながら測定すると、電極間隔が小さければ比抵抗値は浅い部分の比抵抗構造を反映し、電極間隔が大きければ深部の比抵抗構造を反映した値が測定されます。
- 地層構造が水平層状構造に近い場合、深度方向の比抵抗分布を精度良く探査するのに適しています。
- 比較的浅部を対象とした場合はウェンナー法電極配置、深部を対象にした場合はシュランベルジャー法電極配置を用いることが多いです。
【適 用】
- 地質構造調査。
- 水資源(地下水・温泉)開発:滞水層(地下水・温泉)の分布状況の把握。地下水賦存構造の把握。
【適用限界】
- 地表面に電極を接地する必要があるため、地表面が舗装されていると接地が困難な場合があります。
- 測定深度に応じて、測定深度の2〜3倍の延長の電線を地表に張る必要があるため、直線的な道路や空地などを利用して測定を行います。
- ある地点での1次元的なデータであり、地層構造が2次元、3次元的に変化する場合、精度良く解析することが難しくなります。
- 測定深度は数m〜1,500m(2,000m)程度です。
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比抵抗2次元探査
■比抵抗2次元探査 測定概念図
【特 徴】
地表部に直線上の測線を設けて一定間隔に電極棒を設置し、電流を流すとともに電位差を測定し、解析を行って地中の2次元の比抵抗分布を把握します。
【適用限界】
- 地表面に電極を接地する必要があるため、地表面が舗装されていると接地が困難な場合があります。
- 地表部に導電体が存在していると影響を受け、測定が困難になります。
- 比抵抗2次元探査は、地形・地質構造が2次元的な分布をしていれば(測線の側方には変化していない)、精度の高い解析が可能になります。
- 探査深度は数mから300〜400m程度です。
【適用調査目的】
- 道路、トンネル:路線沿いの地質構造の把握。
- 地下水、温泉:滞水層の分布状況、地下水賦存構造の把握。トレーサーによる地下水流動状況の把握。
- 地滑り:滑り面、地下水分布状況の把握。
- 埋設物、空洞:埋設物(廃棄物)、空洞の分布状況の把握。
- 地盤改良:改良範囲、改良効果の把握。
■比抵抗2次元探査 調査実施例
※図をクリックすると拡大図が表示されます。
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比抵抗3次元探査
【特 徴】
- あるエリアの地下の比抵抗の3次元分布を調査する方法です。
- 複数の測線を平行或いは格子状に配置して、種々の電極の組み合わせで測定を行い地下の3次元の比抵抗分布を取得します。
- 近年の測定機器の性能の向上、データ処理・解析手法の確立、画像処理表示技術の向上により3次元探査が可能になりました。
- 時間変化を捉えることにより“4次元探査”へ。
【適用限界】
- 地表面に電極を接地する必要があるため、地表面が舗装されていると接地が困難な場合があります。
- 地表部に導電体が存在していると影響を受け、測定が困難になります。
- 測定深度は数m〜十数m程度です。
【適用調査目的】
- 地下水:滞水層の分布状況、地下水賦存構造の把握。トレーサーによる地下水流動状況の把握。
- 地滑り:滑り面、地下水分布状況の把握。
- 埋設物、空洞:埋設物(廃棄物)、空洞の分布状況の把握。
- 地盤改良:改良範囲、改良効果の把握。
- 宅地造成:地盤状況の把握。
■比抵抗3次元探査 測定概念図
■比抵抗3次元探査 調査実施例
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